本や映画、ゲーム紀行

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「007 慰めの報酬」の異質さについて【後編】

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後半です。

前半で「007 慰めの報酬」の異質さの答えは”大作らしさの無さ”と言いました。これについて詳しく述べていきます。

 

ご存じの通り本作はスピーディなカット構成が特徴的ですよね。序盤のイタリアでのカーチェイスの時点でカメラが素早く切り替わることが分かります。

 

アストンマーチンDBSを運転するボンド、それを追うアルファロメオ、トラックのおっさん?含め視点がコロコロ変わります。トンネルにズームしていく映像にトンネル内のアストンマーチン、銃、ボンドのアップが挟まります。トンネル内を猛スピードで進んでるのでチカチカしますね。

 

視点の切り替わりが激しいということですが、全体を把握できるカットが非常に少なく感じませんか?

激しいカーチェイスと銃撃でアストンマーチンはボロボロになっていきますが2台の車がしっかり映るカットはかなり少ないです。警察車両が転落した後の両車両がぶつかるカットが一番見やすいかもしれません。

 

またセリフがほぼないってことも分かりにくさに繋がっている?と感じます。

 

しかしこのカットだからこそ他のカーチェイスにはないような荒々しさと迫力があり、非常に見ごたえがあると思うんです。

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正直比較と言えるかかなり微妙ですが、スペクターのカーチェイスを張っておきます。アストンマーチンDB10とジャガーC-X75がめちゃくちゃかっこいいです。

 

これはこれで異質かもしれませんがすごく見やすいですよね。全体を映すカットが多く一つ一つが慰めの報酬に比べ長い。長回しのカットと座席付近視点のカットが非常に見やすい。どこからどの方向に車が向かっているかがすぐわかります。

 

大作らしさというか昨今のハリウッド映画らしさってこの”分かりやすさ”にあると思います。しかし慰めの報酬にはそれが無いに等しい。

 

本編はカジノロワイヤルの続編という位置づけで”復讐”を一つのテーマとして物語が進んでいきます。ミスターホワイトを追跡し「クアンタム」という組織にボンドは迫っていきますが、どういう経緯があってこのターゲットを追跡しているか、なぜ格闘しているのか、誰から狙われているか、誰を追跡しているかが普通に見ているだけだと理解が困難だと思います。セリフも断片的なものが多いですし

 

MI6、CIA、クアンタムが動く中ヴェスパーに裏切りを仕向けた男ユセフを捕まえることが最終目的ですが、カミーユの復讐の背景も絡んでくるのでより物語が複雑になっている気がします。複数の人物の物語が同時進行してるんです。

 

こういった映画はハリウッド映画にも多いですが、ここで先ほど述べたカット構成が組み合わさることでより話が汲み取りにくくなっているんです。これが言いたかった…

 

大衆向けアニメ、映画全てにおいて大体は登場人物が物事を説明するシーンがあります。制作側が意図的に理解させようとするカットが多いということです。

 

鬼滅の刃を見ていて驚いたのが説明がめちゃくちゃ多いことなんですよ。序盤の炭治郎の修業シーンは最たるもので…悪戦苦闘している時に心の声が入ってくるんですが、「これ無くても十分理解できるよ?」と感じてしまいました。鼻が良いということをわざわざナレーションしますしね。

 

分かりやすいエンタメも好きですが2001年宇宙の旅を筆頭とした分かりにくい作品も大好きです。つまらないと思った人は「なぜこういった構成になったか」といった部分まで考えない人がほとんどだと思います。

 

ストーリーがよくわからない➡つまらない

 

この考え方が個人的にかなり嫌いなんですよね。まぁテネットみたいな例外もありますが…

 

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メイキングを見て知ったのが、慰めの報酬は「インディー映画らしく撮っている」とのことでなんとなくこう言った推測をしてみたところです。

 

もし慰めの報酬がつまらないと感じるのならぜひブルーレイディスクのメイキングを見てください。マーク・フォースター監督の話がたくさん聞けます。モヤモヤもきっと晴れるでしょう。

 

デヴィッド・アーノルド氏のサウンドトラックは前作に引き続き素晴らしく、アリシア・キーズとジャック・ホワイトの「Another Way To Die」もかっこいいです。前作の「You Know My Name」よりスルメ曲って感じですが、段々ハマって今では大好きな曲です。

 

お付き合いいただきありがとうございました。007ノータイムトゥダイを楽しみに待ちましょう。ではまた